スノビズム
マリーはマリファナ・スナックの端を紅茶にちょっとひたして普通に食べた。
タイラーはその横で彼女の勤め先であるSKTV(最高権力者テレビ)のモーニングショーを見ていた。三か月間戦場を這いずり廻ってきたタイラーにはマリーの酷評通りのくだらなさがなによりもうれしかった。
マリーはマリファナ・スティックを口にくわえながら出発の準備を始めた。タイラーは彼女の軽装備を羨ましく思ったが、今はぬるま湯に漬かっている自分のほうがモーニングショーの他愛なさ並にだらけているぜとよくわからない納得の仕方ですませた。
タイラーは一本だけ残ったスティックを口に入れ、乱暴に壊した。
最高の生活は真空だ
マリーちゃんだろう
タイラーちゃんだ
ジャケットのポケットに入り切る食糧
だべりのプロ
モーニングショーの司会者は窓の外に住んでいた。部屋にいるかどうかしか分からないほど離れていたが、日が当たっているとシャツの柄が大体分かった。今日は青と白の縦縞だった。
くだらないモーニングショーの司会者だけがくだらないモーニングショーによる精神汚染を免れているんじゃなかろうか。もしそうなら、太えやろうだ。
ドアが閉まる音がした。
窓から見えるアパートの壁が急に明るくなった。
芝生以外なにもない公園の隣にある窓とテレビの画面の間をタイラーの視線が往復し始めた。
2000.10.18
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